このアリストテレスの教え子はすでに、ほんとうの原因を知らない限り、情念を癒やすことはできないのを知っていた(アラン)

アランの「幸福論」の冒頭。あまりに有名なシーンです。

アランの「幸福論」はこのテーマを繰り返し繰り返し述べているようにも思います。


名馬ブケファラスとは、アリストテレスの弟子であり最初の世界帝国を築いたアレクサンダー大王の馬です。その名馬と大王の出会いの瞬間を描きます。

人生という荒馬を乗りこなすにも、ピンを探すことだと思います。もしくは太陽という圧倒的な現状の外のゴールに顔を向けることかと、どんなにまぶしくても。


「まといのば」では「イデア」というアイデアをこれから多用していくつもりです。もちろんア・プリオリや神という意味ではなく、あるパズルや暗号の唯一の解というような意味で使っています。

その「イデア」を示すのに、このアランの引用ほど役に立つものは無いように思います。


(引用開始)

1.名馬ブケファラス

 幼な子が泣いてどうにも泣きやまない時、乳母はしばしば、その子の幼い性格について、好き嫌いについてまことにうまい想定をあれこれとするものだ。これは親から受け継いだものだから、と言って、すでにその子のなかに父親の姿をみとめるのだ。こうした心理学的詮索が続いて最後にようやく乳母は、すべてのことが生まれたほんとうの原因、つまりピンを見つけるのである。

 名馬ブケファラスが若いアレクサンドロス(紀元前三五六ー三二三。マケドニア王アレクサンドロス三世)に贈られた時、どんな名人もこの荒馬を手なずけることができなかった。凡俗な者だったら、あきらめて「まったく性(たち)の悪い馬だ」とでも言っただろう。ところが、アレクサンドロスはピンをさがし、たちまち見つけた。ブケファラスは自分の影にひどく怯えているのがわかった。恐怖で飛び上がると影も跳ねるので際限(きり)がないのだ。アレクサンドロスは馬の鼻を太陽に向けた。この方向で支えると、馬は落ち着き疲れを示した。こうして、このアリストテレスの教え子はすでに、ほんとうの原因を知らない限り、情念を癒やすことはできないのを知っていた。(引用終了)(アラン「幸福論」p.9)

*「アリストテレスとその弟子アレクサンダー」

アリストテレスの教えに従った融和策こそが、ヘレニズム文化を構築し、帝国を築き上げました!


そしてこの印象的な引用の後半が、まさに現在開講中の「地政学」と強く結びつくように思います!それはまた次回!

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